Best 40 Albums of 2017
Best 40 Albums of 2017
2017年の本当に良かった音楽のまとめ(最高の40枚)
40. Blue Hawaii, tenderness
Rasmus Faber "Ever After"の斜光すらもかすかに覗かれる、そのブリージンなメロディーをインディーダンス的画角で見事に切り取った"No One Like You"の素晴らしさ。
39. Broken Social Scene, hug of thunder
約1分間の厳かなオープニング曲が終わり"Halfway Home"で幕を開けるその1秒目、1音目から溢れ出るエモーション。その使命感とも焦燥感ともとれるテンションを、決して達観することなく、正直に最後まで鳴らし続けている。堂々たる帰還に祝杯を。
38. Exit Someone, dry your eyes EP
夫婦デュオによる、最もプリミティヴな正真正銘の箱庭ポップ。ウェッティなギターと絡み合うリズムマシンの無機質性、どこまでもコケティッシュなあれこれ、管楽器の洒脱。
37. Electric Guest, plural
もしかしたら今年一番「見落とされている」作品。5年というあまりに長い沈黙を経て届けられたセカンドアルバムで、彼らはデンジャーマウスの威を借りずとも堂々と(今作こそ本当の意味での)”モンド”でミニマルで奥行きのあるインディーダンスの「いま」を鳴らしてみせている。HAIMらとも共鳴しているのは必然でしかない。
36. Ducktails, jersey devil
Real Estateに別れを告げ、己の道を進むその覚悟が音の節々から垣間見える渾身のソロ作。あくまでもローファイ宅録サイケポップ風情を装いながらも、確かなソングライティング能力に支えられた極めて良質なポップアルバム。
35. The Sound of Arrows, stay free
前作で彼らが描き切ったファンタジアはもうない。ジャケットに表れているもの、それは紛れもなく「生」だ。曰く「窓を開けて外へ飛び出した」本作は、その言葉通り開放感に満ちている。そして Stay Free、その一言にすべての哀楽が詰まっている。
34. Simian Ghost, self-titled
北欧ポストロックを経由してPhoenixに出会った渾身のポップアルバムは、僕らの「こういうの聴きたかった」を存分に満たしてくれている。このアルバムにこそ我々は「Ti Amo』と言うべきなのだ。
33. Anna of the North, lovers
Annaが傍にモデルの仕事もしていることをあえて引き出すまでもなく、天は二物も三物も与えるものである。そんな我々のルサンチマンを知ってかしらずか、Anna of the Northという恋人デュオが鳴らすのは決してゆるふわシンセポップでもKawaiiでもなく、"Money"や"Always"に代表される美しき倦怠とシニカリズムだ。それは紛れもなくテン年代後半の世界のムードとシンクロしている。
32. Letting Up Despite Great Faults, alexander devotion
ネオシューゲイザー界隈における「裏切らない選抜」の彼ら。いつだってアイドル。
31. Destroyer, ken
Kaputtは一言で表すならば「洗練」だった。果たして本作は「予言」か「教条」か、あるいは「福音」か。その自身の風貌に違わぬ仙人のような境地へと達したポエティックな傑作。
30. FKJ, french kiwi juice
彼を追い続けて約5年、ようやく届けられたフルアルバムは、あの頃Star Slinger達と研鑽していたチョップ&スクリューによるビートメイクを、円熟と洗練のJazz Funkへと見事なまでに進化させていた。間違いなく彼の集大成にして進化系。
29. Beck, colors
前作Morning Phaseを経ての本作は、かつてのSea ChangeからのGueroの流れを彷彿とさせるが、キャリア25年にして軽々とそのGueroを超えてきた事実に対しては素直に賞賛すべきだ。アグレッシヴだがかつてないほど全方位的にキャッチーなサウンドパッケージはプロデューサーのGreg Kurstinとの出会いもきっと大きい。
28. Day Wave, the days we had
バークリー出身の音楽的秀才が、果たしてどのようにしてこのようなローファイドリームポップへとたどり着いたのか。研ぎ澄まされた末のプリミティヴな音だけで構成された最高純度のポップアルバム。その真意がこれだ。
27. Julien Baker, turn out the lights
ー 魂の音楽 ー
26. Thundercat, drunk
レアグルーヴ感100%なジャケットデザインのさらに斜め上の上を行く「世にも奇妙なカッコイイ音楽」。おなじみのプログレッシヴ感満天のフリーキーなベース、ジャジーに絡み合うピアノと管楽器、か細くもメロウなハイトーンボーカル、そしてゲストにマイケル・マクドナルドにケニー・ロギンス(!)。往年のAORファンが眉をひそめるのを楽しむかのように、自由で気高く、ソウルに満ちている。
25. Molly Nilsson, imaginations
間違いなく彼女の最高傑作。リバーブの残響にレイヤードされたクリスタルなシンセと絡み合うサキソフォン。本作のゲストギタリストでもあるSean Nicholas Savageとも共通する80s"的"アーバンポップにおけるひとつの模範解答。この素晴らしい音楽を、単に「北欧シンセポップ」とだけ表現してやり過ごすのは余りに短絡的である。
24. The War on Drugs, a deeper understanding
売れるべき音楽、スタジアムでこそ聴かれるべき音楽というものは確かにある。The War on Drugsも遂に扉を開けてビルボードのバンドになった。骨太で繊細、実直でエモーショナル。おおよそすべてのバランスにおいて完璧であり、現代における最もグラミープライズに相応しいオルタナティヴロックがこれだ。
23. Josh Ritter, gathering
Broken Social Sceneの復活や、前述のThe War on Drugsの着実なキャリアアップに代表されるような、アンチロック化するシーンにおけるオルタナ界隈の奮闘にはもっと目を配るべきだろう。
オルタナカントリーにおいて(日本においては)いまいち地味な存在でもあったベテランJosh Ritterのこの9作目も間違いなくその一つだ。いい曲をつくっていいレコードをつくる。我々が望むのはそれだけだし、彼らもきっとそうなのだ。
22. Brent Cash, the new high
土曜の朝10:00に最も相応しいレコード。晴れていれば言う事はない。作品を出すたびに我々をときめかせてくれるBrent Cashの(いつも忘れた頃にひっそりとやってくる)待望の新作は、ジャケットが表すとおり、これまで以上に都会的に洗練されたサンシャインポップスに溢れている。この音楽がある限り、朝食は永久にパン派だ。
21. Teen Daze, themes for dying earth
前作からぐっとバンドサウンドへシフトチェンジしたTeen Dazeだが本作も日常の白昼夢的フォークトロニカへとコミットした作品。本当に美しい音だけが鳴っている。これ以上なくペシミスティックなアルバムタイトルだが、それでも(いや、それゆえに)、もうちょっとだけ夢を見たくなる。
20. The XX, i see you
The XXというバンドについてはもう今さら語るまでもないが、一つだけ言うとすれば、とにかく"On Hold"を聴いたときの衝撃だ。Hall and Oatsの”I Can't Go For That”をサンプリングしたこの曲で、イギリスの(ただの音楽好きな)若者が世代とジャンルを超えてDe La Soulともコネクトするという大きな仕事をやってのけた。その価値の大きさは10年、20年経って再び改めてわかる時が来るだろう。
19. Dirty Projectors, self-titled
大胆なメンバーチェンジを経てのこのセルフタイトルには様々な思いがあるのだろう。原点回帰でもあり集大成でもあり、あるいはDavid Longstrethにとってはこれこそがデビューアルバムといった心境なのかもしれない。確かにここにはあらゆる実験精神に満ちていてTyondai Braxtonを起用したのも当然の流れとも言える。かつてのBattles "Atlas"を思わせるような加工ボーカルだけではなく、意匠としてのエクスペリメンタリズムは着実に後世へと受け継がれている。
18. Yumi Zouma, willowbank
ドリームディスコの素晴らしき世界へようこそ
17. You'll Never Get to Heaven, images
そのバンド名、ジャケットアート、サウンド、すべてにおいて最も完璧に周到にプロデュースがなされていた傑作。徹底したウィスパーボイスとアンビエントサウンドにdream、cloud、wind、rainといった代名詞的な言葉を付した楽曲たち。
しかし、この作品をググってもほとんど日本語のページがヒットしない現状。この素晴らしき確信犯をことごとく見落としてるのが日本のメディア()の限界か。
16. Slow Magic, float
振り返れば3年前、彼の前作の所見について僕は「チルウェイブを終わらせるために肉体改造したけどロマンティクは終わらないみたいな」作品、としていた。その後、GiraffageのRemixを経て、いま彼は雲の上にいる。過去2作において描かれていたのはサンセットビーチ、つまりは象徴としてのチルだった。Floatとはベッドルームとの決別であり、エモーショナルの解放である。そして彼はいま新たな地平を見渡している。
15. Faye Webster, self-titled
今年は特に多くの素晴らしい新世代女性SSWが発見された年だったが、その中でもベストニューカマーは文句なくFaye Websterだろう。母親、祖父から受け継いだ音楽的才能は、確かなバックバンドに支えられ、とてもデビューアルバムとは思えない傑作を生み出した。僕らの世代のマリア・マルダーの登場だ。
14. Foxygen, hang
2017年の初頭に届けられたアルバムの1曲目が"Follow the Leader"というタイトルだったときには、なんと悪い冗談かと思ったものだが、40人編成のオーケストラを仕込んだブラスやストリングスが響き渡る、さながらChicagoのようなサウンドが始まった瞬間、これは名盤だと確信する。
徹底的に仰々しさを装った、デビット・ボウイでもトッド・ラングレンでもない、この「過剰な何か」にすら十分な説得力を与えるほどサウンドは完成されていて、僕らは聴くたびに彼らの手の上で踊らされるのである。
13. Great Good Fine OK, III EP
Great Good Fine OKはもう5年近くも前からインディーダンスシーンでは(自らを名乗るそのどれでもなく)greatestだった。もはや安定期に突入したと感じさせる本作は、2年前の"Without You"までのNext Jack Swingは一旦精算し、全体的に控えめのBPMで、踊らせる事より聴かせる事にコミットしたような作品となっている。ポップミュージックとしての純度を増し、どんなステップも受け入れてくれる、最も開かれた一枚だ。
12. King Krule, the ooz
The XXの意欲作の印象が霞みがちになっていったのは、他でもない、2017年の後半にこの作品が圧倒的な存在感を放っていたからだ。
よくあるポストパンクや黒で統一されただけのゴスでもない、ローファイでサイケデリックで、ダブでもありジャズでもある異様な佇まいのサウンドは奇跡的にクールである。
11. V.A , vocaloe
10. Cornelius, mellow waves
Pointからもう15年以上の時が流れたことに驚きだが、小山田圭吾がここにきて歌モノに回帰したという事実が確かな年月の流れを教えてくれる。Pointはそのものずばり、点であり、Seniousはそのグリッドをより細かく複雑にした作品だったが、今作はWavesというだけあって、なるほど「揺れ」だ。つまり、人生とは、すべてはトレモロだ、というメロウな思想に支配されていて、フェンダーローズが大活躍しているのも必然でしかない。
9. NΣΣT, infinity
天才
8. Jlin, black origami
M.I.Aをも軽々と超えてきたおそろしきビートメイカー。これぞフットワークサウンドの極み。複雑にチョップ&連打されたオリエンタルグルーヴはガンギマリ必至。 ヤバいしか出てこないヤバい作品。
7. Sean Nicholas Savage, yummycoma
あまりにも繊細すぎる、現代の、僕にとっての、パープルレイン。
6. Ariel Pink, dedicated to bobby jameson
ローファイサイケベッドルームシンセフォーク、その究極系。聴けば聴くほど眩暈しか起きない秩序の無さ。しかしそのカオスの中にもDam Funkを迎えた脱力FUNKの"Acting"や、B級The Smithsのような"Feels Like Heaven"の美しさが絶妙なバランスで整列している。Ariel Pink関連の膨大なカタログの中でも本作こそが間違いなく最高傑作。こういうのを奇跡と呼ぶ。
5. Tuxedo, tuxedo II
Tuxedoの素晴らしさは、理念以上に欲望に忠実なところだ。アルバムのオープニングを飾る"Fux with the Tux"のイントロはマイケル・ジャクソンの"Baby Be Mine"のオマージュであり、しかし普段着ではなくタキシードを着込む程度には気品を決して欠かすことがない、アーバンなディスコサウンドがここにはある。つまり最高なのだ。
4. Kendrick Lamar, damn.
この作品の1割も、たとえ理解できていなかたっとしても、このRAPがすごいということ、あまりにすごいということはわかる。それだけで十分だろう。
3. Leif Vollebekk, twin solitude
ただただ美しく、どこまでもやるせない。終わりなき日常と、明日という名の孤独。テン年代で最高のフォーク。今年のベストではないが生涯のベストかもしれない一枚。
2. Jens Lekman, life will see you now
Jens Lekmanはたった一人でBelle and Sebastianがやっていたことを描いてみせた!(そういえばJensの見た目もどことなくスチュワート・マードックに似てきた気もする)
人生の悲哀や孤独や慈しみを多彩なアプローチにて完璧なポップソングたちへと結晶化させる、まさしくこれぞ至高、究極、至福、最高のインディーポップアルバム。50年後も変わらず手の届くところに置いておきたい5億点レコード。
1. フィロソフィーのダンス, ザ・ファウンダー
さながら東浩紀が言うところの「観光客」として参加したTokyo Idol Festivalで"Like a Zombie"のイントロをふと耳にした瞬間こそが2017年における個人的ディーペストインパクトであった。それこそ「検索ワードを巡る旅」の道中では出会えなかった音楽の一つだったかもしれない。(事実、昨年のデビューアルバムを聴き逃していたのだから!)
結果的には、ナンバーガールやSuper Butter Dogを発掘した加茂啓太郎のプロデュースによるものだったわけで、ある種の先祖返りー つまりこのサウンドにたどり着くのは必然であったとも言えるのだが、今年の夏以降ひたすらに後追いで聴き倒したデビューアルバム以上の完成度を持ったこのセカンドアルバムを、きちんと2017年にリアルタイムで体験できている事に関しては幸運と言う他ない。
タイトルは「ザ・ファウンダー」。つまりここには新しいダンスと価値がある。思えばディスコ歌謡がかつて頂点を迎えたとき、そこで語られていたのは「ズレた間の悪さも、それも君のタイミング」という価値相対主義的かつバブリーなムードだった。しかし、テン年代以降を代表する「マジ()でガチ()」なエンターテインメントの流れにおいて、ここで鳴っている音楽と、語られているメッセージの強度、確かさこそ、いま本当に信頼できるものであり、僕にとっての最後のジェダイなのである。
おわり。
P.S. 数年ぶりに全部の作品に対してコメント書いたけどめちゃくちゃ辛みでした。。来年はやりませんきっと。。あ、、いや、書かざるをえないような素晴らしい作品がたくさん聴きたいのでみなさん来年もお願いします。。