Best 50 Albums of 2019
2019年の本当に良い音楽50枚
50. Teen Runnings, hot air
49. Navigateur, places to see before you die
48. Hailen Jackson, rebuild
47. Jungle Brown, full circle
46. Devendra Banhart, ma
45. 小沢健二, so kakkoii 宇宙
44. Hoody, departure
43. Pure Bathing Culture, night pass
42. Foxygen, seeing other people
41. DORJ & Melodiesinfonie, muar
40. Light Vibes, past/present
39. Fire-Toolz, field whispers (into the crystal palace)
38. Tuxedo, III
37. Blue Hawaii, open reduction internal fixation
36. Shura, forevher
35. Rose Hotel, i will only come when it's a yes
34. Fanclub, all the same EP
33. Tamaryn, dreaming the dark
32. Friendly Fires, inflorescent
31. Marcos Valle, sempre
30. Flying Lotus, flamagra
29. Blood Orange, angel's pulse
28. Holy Ghost!, work
27. Khotin, beautiful you
26. The True Blue, if that's how you feel
25. Cashmere Cat, princess catgirl
24. Faye Webster, atlanta millionaires club
23. Leif Vollebekk, new ways
22. Great Good Fine OK, ggfour EP
21. Lazerbeak, luther
20. Hannah Cohen, welcome home
19. さかいゆう, yu are something
18. The Japanese House, good at falling
17. Hatchie, keepsake
16. Jo Schornikow, secret weapon
15. Carly Rae Jepsen, dedicated
14. Madeon, good faith
13. Electric Guest, kin
12. Cory Wong, motivational music for the syncopated soul
11. City Girl, somnolent nova
10. Bronze, east shore
9. Pictured Resort, S/T
8. Ducktails, watercolors
7. Late June, all my friends live close
6. Babe Rainbow, today
5. Men I Trust, oncle jazz
4. Lana Del Rey, norman fucking rockwell!
3. フィロソフィーのダンス, エクセルシオール
2. Anna of the North, dream girl
"Time To Get Over It"
1. Work Drugs, fantasy file
"From Malibu"
"Shadow Falls"
2019年を以ってテン年代がいよいよ終わるわけであるが、私としては「ビーチから都市へ」というキーワードでこの10年間の音楽を総括したい。
2009年、Animal Collectiveが名盤 "Merriweather Post Pavilion" をリリースし、その翌年に訪れるテン年間のはじまりには、彼らのDNAがブルックリン中を支配していた。我々はさながら‘俺たちの世代のトロピカリズモ‘といった幻想に陶酔し、委ね、チルした。
そしてその流れはWashed Outの"Life of Leisure"により加速度的に広まっていったことは言うまでもないだろう。
しかし、幻想はリアルには勝てない。
Soundcloudが登場し、世界中のどこかのベッドルームで生み出された無数のトラックがアップロードされ、日々消費され、ある作品はバズり、それらはBandcampにて投げ銭(またはフリー)で発表された。プラットフォームの進化が著作権の壁さえも超えるムーブメントを起こし、やがては音楽シーンそのものをひっくり返すのである。
どこかのアメリカの無名の青年が山下達郎の楽曲を勝手にエディットしてSNSにアップロードしたものを、日本人である僕らが有難がって聴いているなんて未来は、果たして誰が予想していたことだろうか。
(一体彼らがどこから日本のシティポップをDIGしていたのかといえば、もちろんYouTubeである。あらゆるメディアが音楽のあり方そのものを変容させるのだ。)
そして、その結果生まれたのがディスコリバイバルであり、シティポップリバイバルである。サンセットビーチでチルするのではなく、僕らはネオンやミラーボールへと幻想の対象物を変えていった。極めてざっくりと言えば、そんな10年間だった。
Work Drugsの本作が2019年のベストアルバムであることは私はすぐに確信した。
あまりにも美しい"From Malibu"は間違いなく本作品におけるベストトラックだが、そのタイトルからして、はじめはチルウェーブそのものといった前時代的な印象を受ける。しかし冒頭のエレクトリックピアノ、そこに絡むミュートギター、そして耽美なサキソフォン。一聴すればたちまちこれは明らかにチルウェーブの殻をまとった現在進行形のシティポップであることを理解する。
i-D Magazineあたりを皮肉ったかのようなカヴァーアートも、アーバンと言う名の共同幻想に対して意識的であり批評的であることが伺える。きっと彼らはすべてわかってやっているに違いないのだ。
あらゆる意味において、この10年間の音楽シーンの総決算としてふさわしい、文句なしの名盤である。
(了)